愛しさと切なさとエスプレッソ

パンとマンションが好きな人のブログ

暗算が出来ない

最近引っ越しをした。2年の更新を待たずに部屋を出た。

引っ越しにかかる諸費用はかなりのもので、完全に引っ越し貧乏である。

 

6度ほど引っ越しを繰り返している僕は(うち1度は実家から出るためで、1度は会社都合だが)初めのうちは冗談で、すっかり引っ越し貧乏でねーなどと周りに言っていたが、そろそろ冗談ではなくなってきている。

引っ越しは敷金、礼金、仲介手数料、引っ越し代、鍵交換代、火災保険料、防虫加工代、保証会社加入料(必須)など、多くの名目で僕から金を取ろうとしてくる。

1回の引っ越しで数十万はかかるので数十万×回数を計算しようとしたが、急に簡単な暗算が出来なくなって止めた。

せっせとお弁当を作ったり、スーパーの日曜朝市に行ったり、ユニクロばかり着るような日々の節約より、引っ越しを控えるのが僕にとって最大の節約かもしれない。

 

友人から「引っ越しが趣味だね」と言われ、「そうそう、金のかかる趣味だよ」なんて言っていたが、もはや趣味を通り越して特技と言ってもいいのではないだろうか。

出会いのアプリをやっていたら、特技は引っ越しと書きたいところだ。

「突然のメッセージすみません。引っ越しが特技なんですね。珍しいプロフィールなので気になりました。よかったら今度飲みに行きませんか」なんてメッセージが来る事を希望する。

 

ところで引っ越しを繰り返して感じるのは、暮らす地域によって空気が変わる事である。

住んでいたのは神奈川、埼玉、東京の3県なので、電車でせいぜい1時間もあれば移動出来る範囲なのだが、すこしずつ異なった雰囲気を持っている。

同じようなスーパー、チェーン店、コンビニがあって、同じようなサイズ感の街でも、住んでいる人が違えば雰囲気も異なる。

 

例えば学生の時に間違って別のクラスに入った時に強烈な違和感を感じたように、同じ形の教室でも中の人間によって雰囲気は作られるのだと思う。

 

先日出て行った街は、正直あまり良いと思えなかった。

ただこれは相性の問題だと思う。住みたい街、住みやすい街、などと住宅情報誌などで謳われている街も、結局は当たり前かも知れないけど、自分との相性なのだ。

人気者が集うクラスが良いクラスかと言えば、必ずしもそうでは無いのだ。

 

僕が街を好きになれなかったのと同時に、恐らく街も僕を好きじゃなかったと思う。

まるで「街」が意思を持っているみたいだが、住んでいる人の集合体として「街」があるなら、当然街は意思を持っている。

 

引っ越したあと、退去の立会いをしに前の家に行ってきた。

家具を全て出した後の部屋はガランとしていて、それでもとても狭かった。

立会いに来た管理会社の人が「電気、ガス、水道、郵便の転送はしたか」と聞いてきた。

「(特技は引っ越しなので当然)しました」と答えて、鍵を3本返し、同意書に汚い字でサインをして部屋を出た。