愛しさと切なさとエスプレッソ

パンとマンションが好きな人のブログ

なんだか通院記録みたいになってきた

病院からの帰り道は冷たい小雨が降っていた。傘を差すほどでもない雨。僕はフードを被って凌いだ。

自分の気持ちがすっかり落ちているのが分かった。きっと大丈夫と思いながらも、CT検査の結果が思わしく無かった時の事を考えると全ての事がどうでもよくなった。検査の段階のために明言を避けるDrの言葉は、僕の悪い想像が入り込むための余白が沢山あった。親よりも長生きするというのが僕の唯一とも言える目標であるのに、それが達成できない場合について考えてしまう。そうなると確定拠出年金など積み立てている場合ではない。老後のためには60歳までに○千万の貯蓄が必要なんて情報を元に節約している場合でもない。まるで老後のために現在を消費しているような感覚が常にあったけれど、老後が来ない可能性だって当然ある。

こんな時は美味しいものでも食べて元気を出そうと、うさぎやでどら焼きを買って帰ろうと思った。上野御徒町で降りるとメールが来ていた。それは転職エージェントからのメールで、希望していた4月から求人の選考に漏れたという知らせだった。条件の良い求人だったため残念だった。残念な知らせは続くものだなと思った。僕はどらやきを買うのを止め、家に帰った。どらやきで一時口の中が甘くなるからって一体何になるんだと、そんなつまらない気持ちになっていた。

家に帰って布団に潜り込む。冷えていた手が、足が、徐々に温まっていき眠気が訪れる。急に何もかも嫌になってしまった19歳の冬のように、目が覚めてしまう事が残念で仕方がなかった時のように、逃避の手段として眠った。

翌日堀ちえみがブログでガンを告白したとテレビで報道していた。普段だったら芸能人の闘病に興味を持たないのだけど、その日は違った。多分こういったニュースは病気を抱える人に向けられたものなのだと思う。同じ病気を持つ人は堀ちえみの闘病に何かしらの力を貰うかも知れない。病気について不安で情報が欲しい時にブログの情報も有難いからだ。

 

指定されたCT検査の日は前回の診察の日から1ヶ月以上も先だった。急を要していないから大丈夫なのだろうと、検査日までにはだいぶ心は落ち着いていた。検査前に先生の診察。状態も悪く無さそうだし、次の診察の予約は5月。CT撮影も念のためといった感じだし、このまま外来でのフォローになりそうだった。なんだ、大した事は無さそうじゃん。病気について調べるのは本当に不安な気持ちを煽る。僕はやや心配が過ぎたのかも知れない。あんなに暗い気持ちにならずに、どら焼きも3個くらい食べれば良かったのだ。ただ、これで病気を抱える人の気持ちに寄り添えるようになったと思う。もはや病気は他人事では無いからだ。これはコメディカルの端っこで働く僕にとって有意義な経験だったのではないだろうか。前向きな気持ちになったところで、さっさとCTを撮って帰ろうと思った。初めての造影剤は喉がカーッと熱くなって少し気持ち悪かった。

検査を終えて帰ろうと思ったら、技師さんに待合室で待っていてと言われた。くすんだ緑の椅子に座りしばらく待っていると、先ほどの技師さんにCTの画像について先生から話があるから診察室に戻って下さいと伝えられた。僕はエスカレーターを上って皮膚科に戻り、先生に画像を見せてもらった。すると左の腎臓と膀胱の間に何かがあるのだ。素人から見てもはっきりと分かる何かが。これは何ですかと僕が尋ね、通常では見られない所見です、と先生。その日は土曜だったので週明けに早速泌尿器科に受診となった。とても急な診察の予定を組まれ、その早さがまた不安な気持ちにさせた。週明けの月曜は4月1日。新たな元号が発表される日だった。平成の後半は倒産の後通院。さっさと平成が終わって欲しいと思った。