愛しさと切なさとエスプレッソ

パンとマンションが好きな人のブログ

googleの力を使って

4月1日、午前半休をもらい泌尿器科に受診した。

先生は僕のCTの画像を見て「血尿はありますか」と関西のイントネーションで聞いてきた。僕が「無いです」と答えると先生は「そうだよねぇ」と頷いた。

「いや、膀胱ガンかとも思ったんだけど。だけど血尿も無いし年齢的にも可能性は低いですね」

と先生。僕は発せられた「ガン」という響きにいきなりショックを受けた。前から思っていたけどガンって名前は響きが強いから変えた方がいい。悪性腫瘍と言うのも「悪性」の響きが強い。非良性腫瘍みたいな感じで回りくどく言って欲しい。続けて先生が

「あなた、一人暮らし?結婚されてる?ご家族は?」

と聞くので、一人暮らしである事、親は岡山に住んでいる事を伝えた。すると先生は

「じゃあ治療は岡山でされます?」

と聞いてきた。僕は質問の意味が分からないながらも、嫌ですと即答した。

「いやね、まだ分からないけど治療するには少し長い入院が必要になりそうだからね。そうなった場合に、身の回りの世話が出来る人がいた方がいいと思うんです」

先生の話を聞いていて、なんだか大変な事になってきたと思った。僕は姉が近くに住んでいる事を伝えた。姉は僕と同様仕事に時間を割かない人だから、もしもの時に頼りに出来るだろう。

僕は大学の時から血圧が高く定期的に通院している。通院の初期にアドレナリンの数値が高い事が分かったが、甲状腺副甲状腺に異常は無かった事を先生に伝えた。先生は

「異所性のホルモン産生腫瘍かもしれないね」

と言い検査のスケジュールが組まれた。採血採尿、CT、MRI、シンチグラフィ。4月の3週目は週4で半休を取り通院した。快く休ませてくれた職場には感謝している。検査の費用は安くはなかったが、保険を使って人間ドックをしていると思うようにした。

検査の合間に診察があった。柔らかい関西弁を話すDrは検査データはまだ全て揃ってないが診断の見当をつけたようだった。最後の検査の結果で最終的な診断。僕も検査の内容と検査で使用する薬品からgoogleの力を使って見当をつけた。

4月の4週目の月曜、全ての検査結果が出揃って診断が付く日だった。病院はゴールデンウィーク前のためにかなりの混雑。診察は90分遅れとの事だった。僕は病院の外でコーヒーを飲んだりお菓子を食べて時間を潰した。いい天気で気持ちよかった。

ゆっくりコーヒーを飲んで病院に戻ったが、診察にはまだ時間がかかりそうだった。待合室の椅子はほとんど埋まり、受付の女性も皆忙しそうだった。それからしばらく待ってようやく診察に呼ばれた。僕は見当をつけていた診断名を言われると思っていたけれど、結果は診断がつかないというものだった。先生の見当も僕の見当も同じようだったが、それは最後の検査で陰性となり否定されたのだった。そしてこういった症例は少ないからと、さらに専門に診てもらえるからと、さらに大きな病院に紹介となった。先生からの症状についての説明は、可能性についての話ではあるが、怖いものだった。

僕はすっかり気分を落とし、これはいつもの事ではあるが、午後からの出勤がどうでもよくなった。どうでもいいと思いながら、気を紛らわすための出勤だった。

それから数日後病院から電話があった。朝の7時半に電話が鳴り、目覚ましかと思った僕は乾いた口のまま電話に出た。電話の内容は紹介先の病院に5月7日に行ってくださいというものだった。モヤモヤを抱えたまま大型連休を迎える事になってしまった。

元号が変わるからと言って何かが変わるわけでは無いけれど、なんとなく平成のうちに、病院が休みに入る前にある程度の見当をつけたいと思っていた。だけど令和に持ち越し。そしてこういう時の10連休は長すぎる。