愛しさと切なさとエスプレッソ

パンとマンションが好きな人のブログ

プリンター

先日、検査のために1泊で入院してきた。膀胱のわき、骨盤の裏に見つかった腫瘍がどういったものかを生検するためだ。

検査前は絶食してくださいと検査の案内に書いてあったので朝食を抜き、指定された10時半に病院に行った。初めての入院 だった。

病棟の部屋に案内されるとテキパキした看護師さんがやってきて、簡単に今後の流れや入院中の注意などを説明された。テキパキ看護師は説明を終えると他の部屋に行ってしまい、他の若い看護師さんがやって来た。

「点滴をつなぐ準備をしますね」と、アルコール綿で僕の腕は消毒され、二の腕をゴムチューブのようなもので縛られる。

「親指を中に入れて手をグーにしてください」とか「グーパー繰り返してください」とか「ちょっと失礼します」とシッペの要領で腕を叩かれたりして、ちょうど良い血管が出て来たところで針を刺された。看護師さんの名札の裏にはドラえもんが書かれていて可愛かった。「ドラえもん可愛い」などと話しているうちに点滴のルートが僕の腕に完成した。点滴ってすごく入院らしいなと思った。

「検査は15時くらいを予定しているので昼ごはんは絶食ですね」

と看護師さんに言われ、僕は朝も食べていない事を伝えた。どうやら朝ごはんは食べて良かったようだった。検温したり血圧を測ったりする以外は暇なので空腹を抱えたまま眠った。隣の入院患者はお見舞いに何人も来ていて賑やかだった。

ゴロゴロしていたらカーテンが開いて先ほどのテキパキ看護師が現れた。眠っているうちに15時になったようで、そろそろ検査に行きましょうと移動用のベッドに移るように言われた。僕は手術室にベッドで移送される間も「ご飯はいつになったら食べられますか?」と口を開けばご飯の質問ばかりだった。飲水も制限されていたので喉もカラカラだった。すると処置が終わっても2時間は傷口を圧迫して安静にしないといけないため、食事はその後との事だった。

 

「ご飯は術後2時間後」と考えているうちに生検が始まった。リラックスさせるためにとアタラックスPが点滴されるが、初めての手術室にめちゃくちゃドキドキして血圧が上がった。そのために二の腕に巻かれた血圧計のカフは術中何度も強い力で僕の腕を締め上げたので、後日腕は内出血していた。

骨盤のあたりに麻酔が打たれ、「痛かったら言ってくださいね」というDrの言葉と同時に長い針のような物が刺される。この細い管を患部に到達させて組織を取るのだそうだ。針が進むと麻酔が効いているのに響くような痛みを感じた。「痛いです」と訴えると「どんな痛みですか」とドクターに聞かれた。

鍼灸で針がツボに入るとズンと響く事があるじゃないですか。あれの凄く強い感じです。かなり響いてます」

と僕はなるべく詳しく答えたがドクターは大して聞いていないのか鍼灸に行った事が無くてピンと来ないのか、もうすぐ腫瘍に届くから我慢してくれとの事だった。結局は我慢なのねと思った。

 

生検が終了し、先ほど言われた通り部屋のベッドで2時間安静。今日の夜ご飯は何かなと楽しみにしていると麻酔が切れてきたのか痛みがやってきた。我慢できなくは無いが、けっこう痛い。時折様子を見に来る看護師さんに「どうですか、大丈夫ですか」と聞かれるも、大丈夫ですと答えてしまう。ところで女子が言う「大丈夫」は全然大丈夫じゃない時である。僕はおじさんだし複雑かも知れないが内心を察して欲しい。結局は我慢という先ほどの学びもあり、痛み止めを点滴するか看護師さんに言ってもらったのに再び大丈夫ですと答えた。

看護師さんが行ってしまうと次に担当のDrがやって来た。

「明日ね、退院のまえに膀胱の検査をしましょう。朝診察室に寄ってもらえる?尿道にカメラを入れて膀胱の様子を検査するから」

さらっと恐ろしい事を告げてDrは去って行った。尿道にカメラ。ご存知の通りというか、あんな細くてデリケートな所にカメラとは?一体物理的に可能なのだろうか。明日も痛そうだ。結局待ちに待った夕ご飯は痛みが辛くて大量に残し、痛み止めの点滴をしてもらった。

 

痛み止めの点滴が効いたようで、翌朝には痛みはだいぶ楽になっていた。退院のための準備を済ませ、尿道カメラへの心の準備をした。

担当の先生に指示された検査室にはカーテンで仕切られたスペースがあり、カーテンの奥にはマッサージチェアのような物が置かれていた。看護師さんにズボンとパンツを脱いでマッサージチェアに腰掛けるように指示され、指示通りに座ると渡されたタオルを下半身にかけた。

「じゃあ始めますね」

とカーテンの向こうから先生の声が聞こえるとマッサージチェアはリクライニングして開脚し、90度回転してカーテンの向こうに露わな下半身を差し出す形となった。ちょうどひっくり返ったカエルのポーズとなり、麻酔の塗り薬をさっと塗られた後にカメラを挿れられた。少しの痛みとそれなりの恐怖があった。膀胱に生理食塩水を入れながら検査をするようで、尿意を感じたら言ってくださいと言われた。しばらくすると尿意を感じて来たので先生に伝えると、あとは膀胱の状態をカメラで撮って印刷して終了ですとの事だった。早くトイレに行きたいなと思っているとカーテンの向こうでプリンターのエラー音が聞こえてきた。紙切れなのかも知れなかった。先生が小声で「早く」と看護師に指示を飛ばしているのが聞こえた。尿意を我慢しようとすると尿道がカメラを締め付けて痛い。かと言って漏らすわけにもいかない。ジレンマだった。

検査が終わってトイレに駆け込む。検査で尿道に空気が入るのか、放尿の最後の方でブブブと音がした。尿道からオナラが出た!と衝撃を受けた。入院って大変だなと思った。