愛しさと切なさとエスプレッソ

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皮膚科に行った話

「立ち仕事は控えた方がいいかも知れないよ」

と皮膚科のDrは言った。僕はズボンの裾をたくし上げ、痛くも痒くもないけれど斑に赤くなる足を晒したまま、Drにそれは難しい事を伝えた。今まで立ち仕事しかやった事がなく、更に今は派遣。派遣先のルールに従う他ない。

「それなら座った時に足を上げて足を休ませて。とにかく検査だね。炎症の起きているところを切って生検するから。午後時間ある?」

午後は倒産した会社の裁判があったのだが諦めた。元社長の顔をしっかり見てきてやろうと思っていたのに。ドラマみたいに野次を飛ばして生卵を投げつけたいと思っていたが諦めた。午後一番で生検となり、なるべく通院回数が減るようにお願いしたら生検の前に採血が追加された。

秋葉原の皮膚科からの紹介で大きな病院の受診をしたが、大学病院はいつだって融通が利かずめちゃくちゃに待たされる。紹介状を持って9時に受付をし、診察に呼ばれたのは12時を回っていた。そして13時半に生検。それまでに食事と採血を済まさないとならない。採血をし、簡単な食事を済ませて指定された部屋に入ると、先ほどのDrに加えて十数人のDrがずらりと並んでいた。

先ほどのDrが若いDr達に何やら説明している。どうやら診察をしてくれたのは偉いDrだったようで、僕の病状説明と皮膚のどこを切るかを指示している。若いDrたちは髪を染める時に使うような使い捨ての薄いビニール手袋をはめて代わる代わる僕のふくらはぎを触ったり、写真を撮ったりした。

次に処置室に通されると簡単なカーテンで仕切られたスペースに置かれたベッドにうつ伏せに寝かされ、麻酔を打たれた。麻酔の効きを確認するために「これ痛いですか?」と聞いてくる。ツンツンと何かが触れる感覚。僕は痛くはなかったけど、鋭利な何かがふくらはぎに突き立てられている様を想像したら痛いような気がしてきた。「痛いです」と答えるとDrはおかしいなと言わんばかりの反応をし、結果麻酔が追加された。

冷たいものが触る感覚、生温かい血が流れる感覚、縫合の糸で皮膚が引っ張られる感覚。うつ伏せで状態が見えないからこそ想像が働き、そして想像で補塡されるのは取り除かれていたはずの痛みであった。手術も入院もした事の無い僕は、生検なんかで消耗してしまった。処置後僕のふくらはぎの3箇所は分厚いガーゼでギチギチに覆われた。まるで大怪我をしたかのようだった。