愛しさと切なさとエスプレッソ

パンとマンションが好きな人のブログ

月には行かないようです

無職になった。

 

なんていう事だろう。

会社辞めますと言って自発的に無職になったのではない。倒産したのだ。

 

当日僕は13時−22時のシフトだったので、昼過ぎに職場に来てみると朝番の同僚がザワザワとした様子。

「大ニュース!言いにくい事なんだけど・・・。」

と同僚がもったいぶるので

「何?退職?それとも誰か死んだ?」

と聞いてみると同僚は急に顔を曇らせて

「死んだならまだいいよ。あいつ、殺してやりたい」

と物騒な事を呟き始めた。これはただ事ではない。

「倒産?」と聞くと同僚は頷いた。あいつとは社長(ゾゾタウンの社長に似ている)の事だった。

それでもその時点ではいつまで仕事は続くのかはっきりせず、明日社長が来て話をするとのことだった。

僕は倒産するんだったら昼にエビとブロッコリーのサンドイッチと紅茶ラテなんて買うんじゃなかったと思った。ジャムパンと水道水あたりにしておけば良かったのだ。無職を控えていながら贅沢が過ぎる。後悔を感じながらいつも通り午後の仕事を済ませると17時に全社員宛てにメールが届いた。

メールには明日はお店は開けず、パートを含めた全社員本部に集合。そこで社長から説明があり、明日お店を開けない事は絶対に口外しないで下さい、とあった。

事態は僕が思うより急を要するようだった。21時には本部の者がやってきて「もうお店には戻れません」と告げられた。そして荷物をまとめて夜逃げのようにして店を出た。

たった4ヶ月ではあったけど、スタッフ間はとても仲が良かったから寂しかった。

 

翌日、本部で全社員と社長、そして弁護士が集まった。

社員の前で謝罪する社長の顔はこわばっていて、樹皮みたいな色をしていた。

僕は説明の間ずっと社長の顔を見ていた。社長は全然ゾゾタウンの社長に似ていなかった。もちろん「I choose to go to the moon」とも言わなかった。

社長の説明の後は弁護士が今後について説明をし始めたが、結局は債権が整理されないと何とも言えないという、ふんわりとした説明に終わった。

弁護士の後ろで存在感を無くした社長は、立ち枯れた木のようだった。

 

入社当時からボーナスが出るか不安だった。僕のような数字に強くない人でもちょっとした概算ですぐに赤字だろう事が分かったからだ。

だから倒産の結果には驚かなかった。僕が驚いたのはそのあまりに急な決定についてだった。仕事でお世話になった人がたくさんいたのに、挨拶もできないまま夜逃げ同然で終わってしまったのが心残りである。信頼関係を築く事が大事な職業なのに、それに背く事をしてしまった。

せめて最後は綺麗に終わらせたかった。無念な気持ちが湧いてきたけれど、立ち枯れた木にはもう何も届かないように感じた。

 

そんな訳で転職活動を始めた。この前したばかりなのに・・・。

失業手当をもらうためにハローワークに言ったら3×2.5の証明写真が必要との事だった。履歴書用の4×3とサイズが異なる事に軽く怒りを感じたが、履歴書用の写真を3×2,5に無理やりカットし、結果ほぼ顔だけしか写っていない写真を提出した。

ボーナスが出たら買おうと思って我慢していたものも全て買った。ある程度のタイミングで就職して再就職手当をボーナス代わりにしようと思う。