悪口
ゴールデンウィークだった。
多くの人が外出自粛の求めに応じ、公園や川沿いに行き場を失った人たちが集まるようになった。STAY HOME週間と言われても時々は外に出たい。川沿いを歩いているとマスクをして走る人と何人もすれ違った。
5月5日は暑かった。
連休で仕事もなく、出かける用事も無い。僕はこの機会にと窓を拭き、カーテンを洗い、網戸は外して浴室でシャワーをかけて綺麗にした。クリーニングに冬物をだし、衣替えをし、シンクをクエン酸で磨いた。だけど掃除なんて2日ほどで大体が済んでしまうのだ。Amazonプライムでアニメを見たりもしたけれど、僕は多くの人と同じように散歩に出た。川沿いを歩き、公園まで行った。そしてそれが連休中の日課になった。
川沿いを歩いていたら暑くて汗をかいた。マスクをしてサングラスをして帽子を被っていたら顔が暑くなる。ベンチに座り上着を脱ぐ。Tシャツには汗のあとがついていた。
少し涼んで川沿いを北に向かい、橋を渡る。橋を渡った公園では子供を連れた人がボールを蹴ったり、芝生ではシートを敷いてお弁当を食べている人がいた。
5月4日は緊急事態宣言の延長が発表された。
首相は「速やかに対応」、「総力を挙げて」などと言っていた。僕は小学や中学の4月に目標を立てるように先生に言われたのを思い出した。僕は目標を書けと言われたから「勉強を頑張るぞ」とか「部活を頑張るぞ」とか「てつだいをいっぱいする」とか書いたけれど、書いたそばから目標を忘れた。当然目標を達成したかどうか省みたことは一度も無かった。皆の目標は教室の後ろに貼られ、そのどれもが同じようなものだった。
その後「差別はあってはならない」だの「支え合いの気持ちを持って」「絆の力があれば」などと続いた。普段ほとんど差別を丸出しにしている人から、差別をやめましょうなどと言われたく無かった。「絆」なんて響きが良いけど実は不確かな言葉で誤魔化されたく無かった。
5月5日は夕方から雨になる予報だった。コンビニで買ったアイスコーヒーを飲み、あんぱんを食べて帰った。